◇◇◇
ザー、と激しい雨音が聴こえてくる。
「南さん!」
「へっ……」
ふいに名前を呼ばれて意識を戻すと、前からものすごい速さでバスケットボールが飛んできた。
「わっ……」
小さく声を洩らした直後、顔面に感じる激しい痛み。
どうやらバスケットボールは、容赦してくれなかったようだ。
顔がヒリヒリと痛い。
「南さん、大丈夫!?」
同級生の何人かが駆け寄ってきてくれたけれど、痛みよりも羞恥の方が勝ってしまい、うつむいたままコクリとうなずく。
「フユ!!」
パタパタと駆けてきたのは六花ちゃんだった。
「とりあえず保健室行こ」
「大丈夫だよ、このくらい」
へへ、と笑ってみせる私に、六花ちゃんは首を横に振る。
「涙目になってるし。念のため、行っておいで」
六花ちゃんが一歩も引かずに言うものだから、私は渋々うなずいた。
「先生には私が伝えておくから。一人で行ける?」
まるで母親のように心配してくれる六花ちゃんに「大丈夫」と告げて、保健室へ向かった。



