ねぇ、先輩。


ふいに六花ちゃんが「そういえば」と声をあげた。

「どうしたの?」
「もうすぐ麗涼祭(れいりょうさい)だよね」

言われてその存在を思い出す。

「でも私たち初めてだから、どんなことするかまだよく分からないよね。楽しみ」

六花ちゃんはキラキラと目を輝かせた。


麗涼祭。

学園祭とはまた別に、八月初旬に学園で催される特大イベント。

要するに、学園で行う夏祭りのことだ。


私たち一年生は今年が初めての麗涼祭で、楽しみにしている生徒も多い。

聞いたところによると、屋台やステージにとても力が入っていて、毎年学園祭と比肩するほどに盛り上がるのだとか。


「一緒にまわろうよ、フユ」


六花ちゃんの提案に、うん、とうなずく。

六花ちゃんはいつだって、こうして私を誘ってくれる。

「ありがとう、六花ちゃん」

お礼を言うと、六花ちゃんは「やめてよ、お礼なんて」と笑った。