「日向くん、南さん、帰ってきて早々悪いんだけど、ちょっと仕事があって職員室に行かないといけなくて。いいかしら?」
眉を下げる先生に、日向先輩は軽くうなずいた。
「南の面倒は俺がみるから、心配いらない」
「お、おかまいなく……」
私も同じくうなずくと、先生は「ありがとう」と言って頬を緩めた。
「体調が悪くなったら、職員室にすぐ来てね。じゃあお願いね、日向くん」
戸を閉めて出ていく先生に、軽く片手をあげる日向先輩。
そして、また二人きりになった。
どちらからともなく、他愛のない会話をする。話題は尽きなかった。
「あと五分か」
ポツリと先輩がつぶやいた。時計を見ると、授業の残りはあと五分だった。
「時間経つの早いな」
「……ですね」
あっという間に時間が過ぎていく。
授業中の一時間はものすごく長く感じるのに、今流れた一時間はまるで一瞬のようだった。
あと五分か……。
なんだかとても寂しい気持ちになる。



