「フユ、更衣室一緒に行こ」
体操服が入った鞄をひょいと持ち上げて私を促すのは、親友の六花ちゃん。
私は自分ができる最大限眉を下げて、顔の前で手を合わせた。
「ごめん、体調悪くて。ちょっと保健室行ってくる」
細い声で言うと、六花ちゃんは目を大きくして「着いていこうか?」と提案してくれた。
私はふるふると首を横に振って、やんわりと断る。
六花ちゃんは「そっか。またようす見に行くから」と告げて、他の子を誘って移動していった。
……コミュ力おばけ、切実に羨ましい。
一人になる惨めな思いなんて、六花ちゃんはしたことないんだろうな、という考えが頭をよぎって、慌てて頭を振った。