六年後、現在ーーー。



「志倉(しくら)先生、急患です!」

「わかりました。すぐ行きます!」

 私は現在、医者として働いている。高校を出てからは、医者になるために必死で勉強した。
 母親が病気で亡くなってから、私は同じ思いをさせたくないと思ったからだった。 

 母親は高校二年の冬、病気で亡くなった。私には父親がいなくて、母親が女で一つで私を育ててくれていた。
 だから母親が亡くなったことを機に、私は医者を目指すことに決めていた。

 そして六年が経って、私は医者になった。より多くの患者を助けるために。
 きっと母親も喜んでくれると、そう信じて医者になった。だから後悔だけはしたくない。

「わかりますか? 聞こえますか?」

 患者が運ばれてくると、処置室は慌ただしくなっていく。

「挿管します」

「お願いします。 モニター付けます」

 医者という仕事を目指すことに決めた時、それを応援してくれたのは、当時の担任の綾浜先生だった。
 先生は医者になって、たくさんの人を助けることを願ってくれていた。

 私ならそれが出来ると、背中を押してくれた。
だから私は、医者になれた。
 先生のエールのおかげで。