「でもね、あたし結婚も離婚もまーったく後悔してないんだよ。達也に恋して、結婚して、セックスして亜子に会えたんだもん。ま、離婚したけど昔も今もあたしはずっと幸せだし」
「ふふっ、そういう薫のさっぱりした性格、私大好き」
「あたしも優花のこと大好き。優花だけだよ、達也と付き合うって話した時「おめでとう」って祝福してくれたの。他の友達は陰であたしのこと『バカキャリヒモ女』って呼んでバカにしてたんだから」
「なっ……。それはひどいね」
「でしょ~?外野のみんなはあれこれ口出してしてきて好き勝手なこと言うけど、誰もその言葉の責任なんてとってくれないもん。だったら、全部自分で決めるしかないじゃん」
「確かに薫の言う通りだね……」
薫はそう言うと、パスタとスープを食べ終えてからサラダに手を付ける。
「そういう順番で食べる人初めて見たかも」
「あたし、好きな物から先に食べるの。だから、初めはパスタから」
「なるほど」
自由に伸び伸びと自分らしく生きる薫が羨ましくなる。
もしも私が薫みたいな性格だったらもっと色々なことをうまくやれたのかな……?
「そういえば、この間偶然みのりに会ったんだ。小さな赤ちゃん連れてた」
「そうなんだ……。みのりが……」
昨年、外科医のエリートと授かり婚をしたみのり。大学時代の友人の中で結婚するのは遅いほうだった。
「でさ、みのりにドヤ顔されちゃってさ。可愛い息子産んでテンション上がってたんだろうけど『シングルだと大変でしょ?』とか『再婚は考えないの?』とか聞かれちゃってさ。放っとけっつーの」
「確かにみのりは学生時代から結婚願望強かったし、子供も欲しいって言ってたからね」
「そうなんだろうけど、あたしはシングルであることに誇り持ってるし。そこら辺の男よりもずっと稼ぎ良いし、プライドもあるし、娘可愛がってるもん。大好きだもん。世界一幸せにしてやるって思ってる。そういう覚悟持ってんのに、勝手な価値観押しつけられるとムカつく」
人の価値観も考え方もそれぞれ違う。だからこそ、相手を思いやる気持ちが大切になる。
「人の幸せなんてそれこそひとそれぞれじゃん?正解も不正解もその人にしか分かんない。一生独身で幸せな人もいれば、結婚して子供を産んで育てることに幸せを感じる人もいる」
「だね。今の世の中多様性だから」
私の言葉に薫がクックと喉を鳴らす。
「その言葉使いたかっただけでしょ?」
「ふふっ、バレた?」
私が笑うと、薫もつられて笑う。