「母がちゃんとしていたんですよ。わたしと違って社交的な人でしたし、その影響じゃありませんか?」


 とはいえ、前世がどうだ、生まれ変わりがどうだって話したところで、信じてもらえはしないだろう。わたしは無難な返事をする。


「ジャンヌ殿のお母様ということは、魔女でいらっしゃるのですよね? 今はどちらに?」

「数年前に亡くなりました。母は身体が弱かったんですよ」

「それは……スミマセン。辛いことを思い出させましたね」

「いえ、別に。人間誰しもいつかは死ぬものですから」


 現世の母親は、わたしには似ても似つかない明るい人で、天真爛漫、春の陽だまりのような人だった。
 わたしが憎まれ口をたたいても『あらそう?』っていつもニコニコしていて、その度に毒気を抜かれたものだ。

 騙されやすく、ほだされやすい。詐欺なんかにすぐ引っかかるタイプだから、娘のわたしは気が気じゃなかった。


「お母様のこと、大好きだったのですね」

「どうしてそう思うんですか?」

「ジャンヌ殿の顔を見れば分かります。温かくて、優しい顔をしていらっしゃいますよ」


 神官様がわたしの頭をポンと撫でる。
 ダメだ———今は嘘が吐けそうにない。