時間が経つにつれ、広間にたくさんの人が集まってきた。
 どれも知らない顔だから、王室側からの招待者なのだろう。身なりや立ち振る舞いを見るに、如何にも『貴族様』という感じだ。


「————前から思っていたのですが、ジャンヌ殿は隠遁生活を送っていた割に、所作が美しいですよね」


 何を思ったのか、神官様がそんな話題を切り出す。


「隠遁生活を送っていた割に……ってのはあまり関係ないと思いますし、自分じゃよく分かりませんけど」


 っていうか、単に『所作が美しい』で良いじゃない。わたしは思わず顔をしかめた。


「いえいえ。立ち居振る舞いというのは教育や環境がものを言いますから。貴女のそれはどこか洗練されていて、見ていて惚れ惚れしますよ」

「そういうもんですかねぇ……」


 神官様に倣って、わたしもぐるりとあたりを見回す。

 確かに、わたしの場合は、これが最初の人生じゃない。前世では学校である程度の礼儀作法を習ったし、短いながら社会人経験だってある。TPO的なものは実地で学んできたと言っていい。
 引きこもりをしているのは現世に限った話だし、神官様の言うことは一理あるのかもしれない。