「そうは言っても、マリア様はまだ六歳ですから。成人するまでの間、ジャンヌ殿のサポートが必要不可欠です。神殿の外に出られるようになったら、登城をしたり、郊外に出たりしますし、お呼ばれごとも多いですよ」

「……あなたさっき、『ロマンチックな夜会に』『二人で』って言いましたよね? 論点をすり替えるのは止めてくれません?」

「え? 何のことでしょう?」


 神官様がニコリと微笑む。しらじらしい。

 そりゃあ、彼の言う通り、わたしはマリアの親代わりですから? お呼ばれごとに同席が必要な場面もあるかもしれない。
 だけど、あの子抜きで夜会に出るとか一生ない。ましてやそれが神官さまと二人きりでとか。ないない。絶対、あり得ない。


「そういえば、王太子殿下御一行は既に神殿の中にいるんですか? 夜会会場にはいないですよね?」


 偉い人は遅れてくるものって相場が決まっているし、会場内の落ち着きぶりを見るに、まだ会場入りしていないとは思う。


「未だでしょうねぇ。多分夜会の中盤ぐらいに来るんじゃないですか?」

「何で疑問形……貴方ってこの神殿のお偉いさんですよね?」