「ジャンヌさん、あたし会場をグルっと見てくるね!」

「え? ああ……良いんじゃない? 気をつけていってらっしゃい」


 ちらっと見る限り、出席者は身内ばかりだし、護衛は付いてるから問題なさそう。マリアを見送りながら、わたしは小さく息を吐いた。


「――――なんか、思っていたのと少し違うかも」


 わたしの中の夜会のイメージは、シンデレラの舞踏会とか。アナ雪の戴冠式の後のイベントとか。そんな感じの厳かで落ち着いた雰囲気だったから。


「今夜はマリア様のためのイベントですからね。王家もマリア様が過ごしやすい雰囲気を作ってくれたのでしょう」

「ああ……」


 なるほど、そのぐらいの気遣いはできるらしい。まぁ、六歳児を聖女として働かせている時点でどうかと思うけど。


「いずれはもう少しロマンチックな夜会に二人で繰り出しましょうね、ジャンヌ殿」

「いずれは――――って、わたしは平民ですし、夜会に出席する機会なんて今後はありませんよ」


 こういうのは貴族のもの。背伸びをして社交や場の雰囲気を楽しむなんて芸当、わたしにはできないし、平民は家に引っ込んでマッタリするに限る。