夜会会場はいつも過ごしている神殿内の一番大きな広間だった。


(普段は礼拝のために使われている厳かな場所だというのに、俗なパーティーのために使うなんて、罰当たりな)


 考えが顔に出ていたのだろう。神官様が苦笑した。


「我が国の国王は『神の子孫』ということになっていますからね。王の意向は絶対。俗なイベントもバンバン開こう、という方針なんですよ」

「あぁ……まぁ、そうですよね。参拝がイケメンとの握手会と化してるぐらいですし」


 今更ツッコミを入れるのは野暮というもの。
 そういえば、前世でも結婚式は教会でやるのが定番だったし。神聖な場所と催事っていうのは、案外繋がっているものなんだろう。


「うわぁ……! 綺麗っ! 広間がキラキラしてる!」


 夜会会場に入った途端、マリアが思わず声を上げた。
 天井の代わりに広がる、満天の星空。壁には星のように瞬く照明――――色とりどりのイルミネーションが配置されている。

 前世の記憶に加え、魔女に生まれたわたしにとっては見慣れた光景だけど、生まれた頃から隠遁生活を送っていたマリアにとっては新鮮らしい。瞳をキラキラさせながら喜んでいる。