全く。
 元々ふざけた人だけど、こういうたちの悪い冗談は止めてほしい。でないと心臓がもたないし。本当、ありえない。


「それはそうと、ジャンヌ殿。ほら、じっとしてください」


 首筋にずっしりと重みを感じる。

 深い青色の大きな宝石。昔映画で見たのとよく似ている。あれって確か、数十億円とかって聞いた気がしたけど、宝石に詳しくないから分かんない。さすがにそこまでの価値は無いだろうけど。


「神官様――――あんまり聞きたくないんですけど、これ、いくらしたんです?」

「え? 知ったら私と結婚してくれるんですか?」


 神官様はそう言って、ニコリと笑った。とてつもなく邪悪な笑みだ。


 世の中には知らないほうが良いことも沢山存在する。
 神官様の顔つきを見るに、これは間違いなく『知らないほうが良いこと』だろう。

 わたしは大きく首を横に振り、急いでマリアの手を握る。


「さっさと行きましょう、さっさと!」

「ええ」


 神官様はそう言って、クックッと喉を鳴らして笑った。