夜会はそれから数日後、あっという間に開かれた。


「見てみて、ジャンヌさん! 可愛いでしょう?」

「はいはい、可愛い可愛い」


 己の髪の色と同じピンクのドレスを身に纏い、マリアが嬉しそうにターンをする。

 六歳の少女に相応しいフリルやレースがふんだんにあしらわれたそのドレスは、王室からの贈り物らしい。
 子供心をくすぐる大きな宝石のはめ込まれたヘッドティカにイヤリング。日曜朝の戦うヒロインが身につけていそうな愛らしいデザインだ。


(わたしもああいうものに憧れていた頃があった……んだっけ?)


 悲しいかな、とてもぼんやりとしか覚えていない。
 我ながら随分と擦れたおとなになってしまったものだ。マリアのように、素直にオシャレを楽しめるような性格なら良かったのに。


「さてさて、ジャンヌ殿もお着替えの時間ですよ」

「――――分かってるわよ」


 上機嫌の神官様に急かされ、わたしも渋々着替えを始めた。