おばあさんには悪いけど、にわかには信じがたい話だ。

 普段はあんなにふざけてるし、チャラけてるし、見ていて鬱陶しいくらいニコニコしているんだもの。
 今、こうして真面目な顔をして仕事をしているだけでもびっくりだけど、笑わない神官様なんてとても想像がつかない。わたしは一人首をひねった。


「最近――――特に、マリア様がいらっしゃった頃からかしら? 以前よりもずっと明るくて優しい表情になられたのよ? 誰か良い人でも見つけたのかしら?」

「さぁ? どうなんでしょう……」


 まあ、彼女の一人や二人や三人ぐらい、居てもおかしくない容姿をしているけど、なにせあの性格だもの。付いていける女性は少ないと思う。『顔がすべて』ってタイプの女性なら或いはっていうところだろうか?


「ふふ……ありがとうね、ジャンヌさん。これからもまた、私の話を聞いてちょうだいね」

「え? でも、わたし……」


 本気で何もしていない。
 戸惑うわたしに、おばあさんはニコリと微笑む。


「それで良いのよ。本当に楽しいひと時だったわ。ありがとう」


 おばあさんの後ろ姿を見送りながら、わたしは静かに首を傾げる。
 嬉しそうな表情が、脳裏に焼き付いていた。