最初の参拝者は、お年を召したおばあさんだった。
 アイドルグリーティングを目的としていない、めちゃくちゃ正当な信心者。何だか寧ろ申し訳なくて、わたしは手のひらに力を込める。


「あらあら、緊張していらっしゃるの?」

「……ええ。こうしてお祈りをお聞きするのは、初めてですから」


 本当は緊張よりも罪悪感のほうが余程強い。


(どうかこの人の願いが叶いますように)


 密かに汗を掻きながら、わたしはおばあさんの幸せを願う。


「大丈夫よ。他の神官様も、最初は貴女と同じような表情をしていたわ。だけど、今ではあんなに堂々と、立派にお仕事をしているでしょう?」


 おばあさんはそう言って、神官様たちの方を見遣る。


(立派に、ねぇ……)


 他の神官はさて置き、神官様は違うだろう。わたしもおばあさんに倣って、他のみんなの方を向いた。


(――――ん⁉)


 その瞬間、わたしは我が目を疑った。


 先程までチャラけた態度だった神官様が。
 普段ふざけたことしか言わないあの神官様が。

 何だか物凄く真面目な表情で仕事をしている。
 というか、なんか後光がかってる!