「ごめん下さい!」


 それからどのぐらい経っただろう。玄関の扉を叩く音が聞こえてきた。


(うるさいなぁ)


 こんな森の奥深く、来客など滅多にありゃしない。道に迷った旅人が助けを求めに来たのか、はたまた薬を急ぐ町人か。
 どちらにせよ、助けてやる義理など無いのだから、居留守を使うに限る。


「ごめん下さい!」


 声が言う。ドンドンとノックが響く。思ったよりもしつこいようだ。
 だけど、こちらも根競べは苦手じゃない。シーツをしっかりと被りなおす。

 外の明るさを鑑みるに、既に正午を過ぎているらしい。だけどわたしはまだ寝れる。まだまだ寝れる。この客さえいなくなってくれれば。


「ジャンヌ殿! いらっしゃるのでしょう?」


 次の瞬間、客はハッキリわたしの名前を呼んだ。
 そう言えば、声にも何となく聞き覚えがある。
 杖を振り、玄関のカギを開けてやる。すると、現れたのは昨日マリアを連れて行った見た目が無駄に美しい神官だった。