リンゴーンと厳かな鐘の音が響き渡る。その瞬間、神殿前の広場から、割れんばかりの歓声が上がった。


(いや、開幕のブザーかよ)


 ありがたい筈の神殿の鐘の音なのに! 前世で親友に連れられて一度だけ行ったコンサートを思い出しつつ、わたしは心のなかでツッコミを入れる。

 こうしている間にも、集まった人々は各々の推しメンの名前を叫び、神官たちの登場を今か今かと待っている。


「皆様、お待たせいたしました」


 前世でいう拡声器的なものを手に、神官様やマリアが皆の前へ出る。その瞬間、割れんばかりの黄色い声援が広間に響き渡った。


「本日のお祈りを開始いたします。どうぞ、ゆっくりと、順番に前へお進みください」


 なんだろう。とてつもない違和感を感じる。
 やっていることはアイドルの握手会なのに、口調が事務的というか、砕けていないせいだろうな。めちゃくちゃちぐはぐだ。