「どんな世界にも、偶像っていうのは必要なのね……」


 数百年前だろうが、異世界だろうが、人間のやることは基本変わらない。求めているものもだいたい一緒。

 誰だってみんな、夢中になれるものがほしいし、辛い日常を忘れたい。
 漫画もゲームも存在しないこの世界。暇つぶしの娯楽を求めている場合だってある。

 そういう意味で言えば、救いを求めているっていう神官様の言葉も、あながち間違っては居ないのかもしれないなぁ。


(帰りたい)


 正直わたしは、そういうことに興味ない。崇拝するのも、崇拝されるのも勘弁だ。
 帰って布団にくるまりたい。食事も忘れてダラダラして、一人静かに眠りたいのに、どうしてこうなったんだ?


「さあ、ジャンヌ殿。参りますよ?」


 言いながら、神官様がわたしの手を握る。
 どう足掻いても逃がす気はないらしい。


(めんどくさ……)


 ついつい深いため息が漏れた。