「準備できました?」


 なんとも絶妙なタイミングで、神官様が顔を覗かせる。マリアも一緒だ。


「わぁ! ジャンヌさん、綺麗! すっごく綺麗」


 マリアが瞳をキラキラさせる。さっきまでの嫌な気持ちが少しだけ晴れ、わたしはほっと息を吐いた。


「はいはい、ありがと」

「お姫様みたい! 可愛い!」

「姫? いや、あんたの方が余程そういう格好してるじゃない」


 フリルやレースがふんだんに使われたドレスは、ゴスロリ――――とまではいかないけど、そういう服装。
 多分だけど、あまり聖女らしくはない。
 まだ幼いからか、綺麗というよりただただ可愛い。これで民の信仰の対象になるのだろうか?


「どうです? 似合っているでしょう? 民からの評判もすごいんですよ!」

「……似合ってはいるけど、そいつらをマリアに近づけて大丈夫なの? 手を握ったりするんでしょう?」


 単純に聖女として尊敬を集めているっていうなら良い。だけど、そうじゃない連中はつまり、マリアの可愛さに惹かれたってことで。下手すりゃ幼女趣味があるってことでしょう? そりゃ、ちびっこはその年代にしかない可愛さがあって、前世でもアイドルとか子役とか、大人気だったけども、どうしたって不安になる。