(くそぅ……せっかく着替えたのになぁ)


 神官様はわたしに着替えを命じた。自分の服(サイリックが取りに行ってくれた)ではなく、神殿側が用意した服を着ろというのだ。

 渡されたのは、白いシルクのドレス。白と銀の糸で繊細な刺繍が施されている逸品で、見ているものに『清楚なお嬢様』って印象を与える。
 仕上げに侍女たちに髪を結い上げられ、純白のベールを頭からかぶった。


「ったく……ガラじゃないっつーの」


 今より擦れてなかった前世ですら、こんな格好したことないのに。ホント、バカみたい。


 いや――――違う。
 一度だけあった。

 前世で――――結婚式の衣装合わせで、ウェディングドレスを試着したことを思い出す。
 綺麗だねって言われた。誰よりも綺麗だよって。
 それでわたしは『嬉しい』って笑って。

 だけど彼は、結局、違う人を選んだ。

 どす黒い感情が胸の中を渦巻く。
 息が物凄く苦しくなった。