「嘘を吐かないでください」

「え? 私は嘘なんて吐いてませんよ?」

「そんな顔してとぼけないで」


 回り込み、神官様の顔を見たら、彼は筆舌に尽くしがたい嫌な笑みを浮かべていた。頬をポッと赤らめ、まるで乙女みたいにはにかむ様は、見ていてとてもイライラする。


「実は――――」

「やっぱり良い。言わなくて良いです」


 寧ろ聞かせてくれるなって思っていたら、神官様は蕩けるような笑みを浮かべてこう続けた。


「ジャンヌ殿があまりにも愛らしくて。吸い寄せられるような感覚がして。これはもう愛でねばと! 使命感のようなものに駆られ、頬を撫でたところまでは覚えているのですが」

「ああもう! 言わなくて良いって言ったのに!」


 この男、前から思っていたけど、かなりのSだ。わたしが嫌がっているのを見て、楽しんでいる。
 つまり、からかうことが目的で、わたしに対して気があるわけではない。絶対、そうに違いない。