「ねえねえ、マリアも木から生まれてたりするのかな?」

「木? ……さあねぇ? 分からないけど、可能性はあるかもね」


 なーーんて。現実でそんなことがあるわけない。
 とはいえ、わたしだって子どもの夢を無碍に壊したいわけじゃない。マリアにはリアルに母親が居ないし。捨てられたんじゃなくて神秘的な何かから生まれたって思った方が幸せだもんね。事実は誰にも分からないんだし。


「ジャンヌさん、あたしモモタローのお話が聞きたい! そっちの方が良い」

「……良いけど、わたし絵本なんて持ってきてない。絵も字も無いわよ?」

「良いの! 目をつぶって想像するもん!」


 マリアは言いながら、エッヘンと胸を張る。わたしは思わず笑ってしまった。


(仕方がない)


 非常に面倒だけど、なんだか布団が温かいし。
 偶にだったら、こういう夜も悪くない。


 マリアはわたしが話すお伽話を、笑いながら聞いていた。二人でツッコミを入れながら話をしている内に、彼女はいつの間にか眠っていて。
 わたしも、数日ぶりに声を上げて笑ったおかげか、その夜は妙にぐっすり眠ることが出来たのだった。