「良いの?」


 泣きながらも、マリアはわたし達の会話を聞いていたらしい。ゆっくりとこちらを見上げながら、不安そうに首を傾げる。


「良い訳じゃない。けど、楽させてくれるっていうし、仕方ないもん」


 何故だか顔を見られたくなくて、ふいとそっぽを向けば、マリアはわたしにギュッと抱き付く。スカートに涙がじわっと染み込んで、くしゃくしゃって強く握られて。染みになるし皺になるなぁなんて思いながらため息を漏らせば、神官様がニコリと笑う。


「だから、その顔止めてよ」


 この男、何度同じことを言わせる気なんだろう? そんなことを思いつつ、わたしは唇を尖らせる。

 こういう時、手のやり場に困ってしまう。気を付けをしようにも、腰にはマリアの手が回っているから、どうやったって干渉してしまうし。
 仕方なく――――仕方なく頭を撫でてやる。ぶっきら棒で、全然優しくない手付き。さっきの侍女達とは全然違う。
 それでもマリアは、とても嬉しそうに微笑んだ。