神官様に通されたのは、神殿らしい優美な一室だった。磨かれた床、真っ白な壁紙。高い天井には美しい女神と天使の絵画が描かれている。並べられた調度類は華美ではない上品なデザインで統一されていて、落ち着いた大人の空間っていう印象。


「こちらがジャンヌ殿のお部屋です。如何です? 中々に良い部屋でしょう?」


 神官様はそう言ってどや顔を浮かべる。


(腹立つわぁ)


 そう思うものの、彼の後ろにはこの部屋を準備したであろう侍女達が並んでいる。彼女達は期待と不安の入り混じった眼差しでわたしを見つめていて。残念ながら、そんな状態で「否!」と言うだけの胆力はわたしにはない。


「はい。とても良い部屋だと思います」


 答えれば、侍女達がぱっと瞳を輝かせ、嬉しそうに微笑み合う。次いで神官様が満足気に笑った。


「あのね、この部屋、あたしの部屋の隣なんだよ!」


 そう口にしたのはマリアだった。繋いだ手に力を込め、彼女はニコニコと笑う。


「良かったですね、マリア様。これでいつでもジャンヌ殿のところに行けますね」

「うん!」


 神官様とマリアが顔を見合わせる。わたしは思わず「ちょっと待って」と口を挟んだ。