「ありがとう、セドリック! あたしのお願い、本当に叶えてくれたのね!」


 戸惑うわたしを余所に、マリアは上機嫌に神官様へと微笑みかける。


「もちろん。マリア様の大事な願い事ですからね」


 神官様はそう言って、マリアの前に跪く。普段チャラけている癖に、無駄に真剣な表情だ。


(普通は逆でしょう)


 子ども相手に真面目に接してどうするのさ。
 そりゃ、この子は選ばれし聖女なのかもしれないけど、わたしにとってはただのマリアだし。やっぱりこの男、腐っても神官ってことなんだろうか。


(疲れた……)


 ため息が漏れる。腹ペコの状態で、普段使わない頭を使うのは自殺行為に近い。
 家に帰りたい――――だけど、マリアの様子を見るに、すぐには帰してもらえそうにない。


「さあさあジャンヌ殿、どうぞこちらへ。お部屋にご案内いたします」


 神官様がそう言って微笑む。
 普段と違う、邪気のない表情で。


「その顔止めてください」


 寧ろ腹が立つから。
 もう一度ため息を吐きつつ、わたしは彼の後に続いた。