「ちょっと、何してるんですか!」

「え? そんなの、見たら分かるでしょう?」


 不敵な笑み。頭に血が上り、最早爆発寸前だった。


「分かりません! そもそも見たくありません! さっさと手を放してください!」

「ええ? 良いじゃありませんか。減るもんじゃないし」


 怒髪天を衝くって多分こういうことを言うんだと思う。背筋がビリビリ震えるし、腸が煮えくり返りそうだ。


「あなたのその自信は一体何処から来るんですか!? 世の中にはあなたを嫌う女性も居るってことを知るべきだと思います!」


 顔が良かったら何をしても許されるなんて、とんだ勘違いだ。こんなことばかりしていたら、いつか女に刺されるんだからね。もしかしたらその相手はわたしかもしれないけど。


「ジャンヌ殿は私が嫌いなんですか?」

「はい。嫌いです」


 考えるまでもない。即答すれば、彼は悲し気に眉を曲げる。


「本当に? 嫌い嫌いと言いつつ、本当は好きなんでしょう?」

「馬鹿なんですか!? 本当に。この世に生を受けて以降、あなたが一番嫌いです」


 一体どういう神経してるんだろう? 図太すぎるでしょう。
 この男がわたし以外の女の子達にどれぐらいチヤホヤされているのか、拝んでみたいもんだ。いや、もう一秒たりとも一緒に居たくないんだけど。
 無理やり手を振り払い、撫で擦る。さっさと家に帰って手を洗いたい――――そう思ったその時だった。