「いやぁ、良い発想ですね」

「そりゃあ、どうも。発案者、わたしじゃありませんけどね」


 魔法使いは掃除機(擬き)を杖で叩きながら、実際にゴミを吸い込んで遊んでいる。説明しなくても使い方が予想できる当たり、勘が良いというか。彼が天才魔法使いって言うのは本当なのかもしれない。


「だけどこの魔法、こんがらがっているんですよ」

「は?」


 思わぬ言葉に首を傾げれば、彼はもう一度、掃除機を杖で軽く叩いた。


「ジャンヌ殿、これ、魔力の流れを考えずに適当に作ったでしょう? 不要な負荷が掛かっていて、作業効率が悪くなっているんですよ。お陰でパワーも落ちてますし」


 そう言って魔法使いは、わたしに向かって掃除機を差し出す。


「ささ、使ってみてください。劇的に良くなっている筈ですから」


 腹が立つほどの満面の笑み。ムッとしつつも、ようやく返却された杖で掃除機を叩いてみる。


「……!」


 だけど、次の瞬間、わたしは思わず目を見開いた。


(すごい! 本当に動きが良くなってる)


 前世で使っていたのと同じかそれ以上の吸引力。魔力の消費も極端に少ないし、本当に驚いてしまった。