もう一人の来訪者は、黒地に金糸の装束を身に纏った、緑色の髪の男だった。丸眼鏡にもじゃもじゃ頭で、イケメンとは程遠い容姿をしている。


「誰なんですか、あなたは」


 彼が魔法使いであることは間違いない。しかも、国お抱えの優秀な魔法使いだ。だけど、わたしにとってはただの不法侵入者。神官様もろとも即刻叩きだしてやりたい。


「ボクはサイリック。見ての通り、天才イケメン魔法使いだよ」


 ニカッと笑みを浮かべつつ、魔法使いはわたしの手を握る。


「天才……イケメン…………」

「そうそう! サイリックは本当に天才なんですよ! まあ、イケメンっぷりは私には多少劣りますがね」

「多少……」


 面倒くさいのが増えたせいで、言い返す気力はゼロだ。もう、わたしは置いて二人で勝手にやって欲しい。


「以前お話したでしょう? 魔法使いの知り合いがいるって。彼にジャンヌ殿の発明品を紹介したところ、是非実物を見て見たいというものでね。こうして連れてきたわけです」

「ああ、さいですか」

「それから、もう一つ目的があるんですけど」

「良いです。聞きたくないので」


 正直言ってもう、理由なんてどうでも良い。神官様の持参したフルーツを食べながら、わたしは大きなため息を吐く。
 そもそも、わたしが許可を出すまでもなく、魔法使いは家中を物色している。これはもう、台風にでも見舞われたと思って、過ぎ去るのを待つしかない。