「さあさあ、ジャンヌ殿。私と一緒に食事をしましょう」


 ニコリと、神官様が満面の笑みを浮かべる。
 恐ろしい。彼の美しさ、神々しさは、わたしにとって寧ろ邪悪だ。

 万事休す――――そう思ったその時、部屋の隅からガシャーン! と大きな音が鳴り響いた。


「何事!?」


 飛び上がり、神官様の腕からすり抜けたわたしは、ぎょっと目を丸くする。何かの焦げるような嫌な匂い。モクモクと上がる煙。


(火事!?)


 慌てて魔法を掛けようとしたその瞬間、わたしの指先から杖がスルリと飛び上がった。


「まあまあ、そう慌てないで」


 初めて耳にする、少し高めの男の人の声。ビクリと肩を震わせたら、背後にはいつの間にか神官様が立っていて、支えるように抱き留められる。


「初めまして、ジャンヌ殿」


 煙の中から男が一人現れる。
 神官様とよく似た、暑苦しい笑みを浮かべて。


(勘弁してよ)


 すきっ腹にどデカいボディーブローを喰らった気分だった。