「ほらほらジャンヌ殿、お腹が空いているのでしょう?」


 そう言って神官様は、ブドウみたいな瑞々しい果物をバスケットから取り出す。自分で注文していないから、この男が言う所のサービス品なのだろう。
 空っぽのお腹がぐぅと勢いよく鳴り響く。物凄く悔しいが、めちゃくちゃ美味しそうだ。


「はい、あーーん」

「………………前から思ってましたけど、神官様って馬鹿なんですか?」


 わたし、幼児じゃありませんけど。
 百歩譲って恋人同士ならばあり得る(かもしれない)けど、何故わたしがこの男の手ずから物を食わなければならないんだ。


「まさか! そんなわけないじゃありませんかぁ」


 そう言いつつ、神官様はわたしの唇に果物をグイグイと押し付けてくる。いつも以上にキラキラした笑顔が怖い。


(さすがに馬鹿は言い過ぎだった!?)


 怒らせてしまったのだろうか。果物で唇を抉じ開けられ、凄まじい圧を感じる。


(いやいや、何これ。もしかして食べるまで終わらないパターン? 嘘でしょう? 本気で勘弁してほしいんだけど!)


 首を横に振れば、神官様は更にずいと身を乗り出す。傍から見ればベッドに押し倒された形だ。だけど、色気なんて皆無で、気分はライオンに捕食されるナマケモノって感じだけれども。