さて、起き上がる体力も残っていないわたしは、ベッドでゴロゴロしながら配達を待つ。売り手側はプロだから、わたしがベッドで寝転んでようが、いつもにこやかに応対してくれるし問題ない。


(あっ、来たみたい)


 ジジ、ジジッと電子機器から漏れ聞こえる電磁波みたいな音が鳴り響き、家の中央に描かれた魔方陣が光を放つ。わたしの空腹具合を察してか、いつもよりもやけに早い到着だ。
 期待に胸を膨らませながら、布団の中から魔方陣を見つめる。

 取り敢えず先ずは水を飲もう。それから剝かずに食べられるフルーツを齧って、体力が戻ってきたら久々にご飯を作ろう。十五分で作れるぐらいの簡単なもの。お腹がこなれて来たらもう一度寝る。それが良い。

 だけど次の瞬間、わたしは愕然と目を見開いた。
 目の前に居るのは、いつもの問屋のおじさんじゃない。無駄に暑苦しい笑みを浮かべた別の男だ。