「お母さん! セドリック!」


 その時、マリアがこっちに駆け寄ってきた。
 桜みたいなピンクの花を集めた小さなブーケを手に持ち、ニコニコととても嬉しそうに。
 セドリックはわたしを地面に降ろして、マリアの方に向き直る。


「セドリック! お母さんへのプロポーズ、ちゃんと成功したの? あたしたち、家族になれるの?」

「……えっ?」


 もしかしてマリアは、セドリックがプロポーズをすることを知っていたの? 
 知っていてわたしには黙っていたの?

 呆然とするわたしを尻目に、セドリックは大きく頷いた。


「ええ、マリア様! 今しがたジャンヌにオーケーをいただいたところです。
ですから私とマリア様は、これから家族になれるのですよ!」

「本当⁉ やったーーーー! セドリックがお父さん! マリアのお父さん! 嬉しい! すっごく嬉しい!」


 狂喜乱舞するマリアを、セドリックがふわりと上に抱き上げた。
 周囲の人々が困ったように――――けれど、とても嬉しそうに微笑む。

 さっきまで完璧な――――清らかな聖女の顔をしていたはずのマリアが、今ではすっかり普通の六歳の女の子の顔をしているからだ。


(うん――――悪くない)


 わたしたちが家族になることで、ほんの少しの間でも、マリアが聖女ではなく普通の女の子で居られる時間を作れるなら心から嬉しい。あの子が甘えられる人は一人でも多いほうが良いし。なによりわたし自身、マリアとセドリックと三人で一緒にいるのが好きだもん。