セドリックの懇願。

 わたしとマリアと家族になりたい――――それはセドリックの心からの願いだろう。
 城を追われ、家族からも見放されたように感じていた彼が『家族がほしい』と思えるようになった――――わたしはそのことがとても嬉しい。


(だけど、本当にわたしで良いんだろうか?)


 正直自信があるわけではない。

 けれど、セドリックは頑なだったわたしの心を変えてくれた。心が変われば運命が変わるなんて格言があるぐらいだもの。これからわたしは、きっともっと変わっていける。セドリックと一緒に現在を積み重ねていけば、今よりもっと幸せになれるに違いない。


 しばらく逡巡してから、わたしはとても小さく頷いた。


 けれど、それだけでセドリックには十分伝わったらしい。彼はわたしのことを抱き上げ、それから嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。


「ちょっ! こんなところで何してるんですか⁉」

「スミマセン……嬉しすぎて、自分を抑えられないんです」

「いやいや、抑えてよ! わたしのことを思うなら、ちゃんと抑えましょうよ!」


 幸い、集まった人々からわたしたちの姿は見えないけれど、他の神官たちがこっちを見ている。その上『またあの二人か』的な視線を送られると、なんともいえない気持ちになるから止めてほしい。