「――――一緒に暮らしませんか?」

「は?」


 改めて、聖女としてマリアが広間に集まった民衆に拍手で迎えられたその時、セドリックが小さな声でそう囁いた。彼はわたしの手を握り、そっと瞳を細めている。


「……一緒に暮らすも何も、今も同じ神殿に住んでいるじゃありませんか」


 だから、改めて提案されるようなことはなにもない。
 そう言外に伝えたのだけれど――――。


「実は、郊外に家を建てているところなんです」

「家を建てている?」


 ついつい大きな声を出しそうになり、わたしは慌てて声を潜めた。


「ええ、現在進行系で。大きすぎず小さすぎない、良い感じの家を。ジャンヌとマリア様と一緒にそこに住もうと思いまして」

「……一体いつからそんなことを?」

「一ヶ月ほど前からですね。完成まではあと三ヶ月ほど、といったところでしょうか?
貴女が嫌がると思って、大豪邸は避けたのですが、マリア様に安心して住んでいただくために、造りはとてもしっかりしていて、建築費用もそこそこかかっているので、断られたくないなぁというのが本音です」

「ちょっ……その言い方はズルいです」


 そんな内情を伝えられたら、本気で断りづらいじゃない?
 本当、セドリックは神官のくせに性格が良いとは言い難いんだから。