マリアが再会を喜べば、彼女の罪は有耶無耶になり、美談に収まったかもしれない。
 けれど、マリアはこの人を母親だと認めていない。寧ろ、ハッキリと拒絶をしている。

 つまり、この人は愚かにも、自らの罪をここで露呈しただけなのだ。


「それでは、中でゆっくりと、詳細を聞かせていただきましょうか」


 騎士たちがそう言って、女性のことを取り囲む。


「や……待って! 私、そんなつもりじゃ」


 わたしは現世の司法制度に詳しくないし、時効の兼ね合いや、量刑の程度、罪人がどうなるかなんて全然わからない。けれど、全くお咎めなしというわけにはいかないだろう。なんといってもマリアはこの国の聖女。とても重要な存在なのだから。

 とはいえ、神殿は裁判所ではない。ここではひとまず話を聞くだけになるのだろう。
 だけど、それでも今、この人は己の境遇に恐れ慄いている。


(マリアの絶望を、悲しみを思い知れば良いんだわ)


 ふん、と鼻を鳴らし踵を返す。


「お母さん」


 だけど、そんなわたしの元に、マリアが勢いよく飛び付いてきた。
 悲しみも絶望も微塵も感じさせない、幸せそうな笑顔。



(ああ、この子にとっての母親は、本当にわたしだったんだなぁ……)


 わたしは六年分の愛情を込めてマリアを抱き返す。
 それから二人で涙を流しながら笑い合うのだった。