『ねえ、もしも……もしもよ? 本当のお母さんができたら、マリアはどうする?』

『そうだねぇ、嬉しくて泣いちゃうかもしれない』


 あれは――――あの時マリアが話していた本当のお母さんは、わたしのことだったんだ。


 人はいつ、親になるのだろう。

 妊娠をしたら?
 出産をしたら?
 授乳をしたら?

 もしかしたら、どれも違っているのかもしれない。妊娠とか出産方法とか、血の繋がりが云々とか、そういうことじゃないのかもしれない。


「こんな――――こんなズボラで、ダメな母親でいいの? ご飯もちゃんと作ってあげられなくて、掃除もまともにできなくて、教育熱心でも世話焼きでもない――――ダメなところしかない母親だけど、それでも良いの?」


 人はいつ親になるのか――――明確な答えはわたしには分からない。
 けれど、もしもマリアがわたしを母親として認めてくれるというのなら――――その想いに応えたいと思った。


「言ったでしょ? マリアはジャンヌさんが良いの! ジャンヌさんじゃなきゃダメなの! ジャンヌさんと、ずっと一緒に居たいの!」


 マリアが顔を埋めたところが、じわじわと温かく濡れていく。
 わたしはその場にしゃがみ込み、マリアを強く抱きしめながら、声を上げて泣き叫んだ。