『ねえ、もしも……もしもよ? 本当のお母さんができたら、マリアはどうする?』

『そうだねぇ、嬉しくて泣いちゃうかもしれない』


 昨夜のマリアとのやり取りが脳裏に浮かんで、わたしの胸を締め付ける。

 だって、経緯はどうあれ、マリアは本当のお母さんに会うことを望んでいるんだもの。わたしが止めるわけにはいかない。

 わたしと同様、マリアのもとに駆け寄ってきたセドリックを制止して、わたしたちは傍らで二人のことを見守った。


「……お母さん?」

「そうよ! 今までごめんね、マリア。だけど、これから先はずっと一緒よ。絶対に離れたりしないわ! 私があなたと――――」

「違うよ」

「…………え?」


 マリアが母親を押し返し、怪訝な表情で首を傾げる。
 固唾をのんで見守っていた人々が一斉に息を呑む。

 それからマリアは、くるりと踵を返すと、わたしに向かってギュッと抱きついてきた。


「だって、あたしのお母さんはジャンヌさんだもん!」