「ねえ、もしも……もしもよ? 本当のお母さんができたら、マリアはどうする?」


 こんなこと、本当は聞くべきじゃないのかもしれない。
 だけどわたしは、尋ねずにはいられなかった。


「本当のお母さん?」


 マリアはキョトンと目を丸くし、それから小さく笑みを浮かべる。


「……そうだねぇ、嬉しくて泣いちゃうかもしれない」

「え? 嬉しいの?」


 あまりにも思いがけない返答に、わたしは思わず言葉を失ってしまう。


「うん! だって、ずっとずっと、そうだったら良いなぁって思ってたんだもん」


 わたしにギュッと抱きつきながら、マリアは静かに目を瞑った。


「……そっか」


 そうか。
 ……そうだよね。

 どれだけ非道なことをされても、マリアにとってはたった一人の母親なんだ。
 会いたいんだ。
 会って、抱きしめてほしいんだ。

 そう思うと、なぜだか胸が苦しくなった。