その日の夜、わたしのベッドにマリアが潜り込んできた。


「どうしたの? 眠れない?」


 マリアは空気が読める子だ。あのあとも、わたしたち大人の会話に無闇に首を突っ込んできたりはしなかった。
 だから、事情を知って傷ついたわけじゃない――――そう思いたいのだけど。


「ううん、ジャンヌさんに甘えん坊したくなっただけ!」


 ギュッとわたしの身体に抱きついて、マリアはエヘヘと笑い声を上げた。


「全く……もう六歳なのに」


 なんて、そんなの嘘。
 まだまだ六歳。甘えたいさかりだって、ちゃんと分かってる。

 しかもわたしは、これまでマリアを甘やかしてこなかった。
 抱っこも、おんぶも、撫でることも、抱擁も、この子が望むままに与えはしなかった。


 それでもマリアが懐いてくれたのは、わたし以外に頼れる大人が居なかったからだ。
 子供であるマリアは、わたしが居なくなったら生きていけない――――大人になれない。だからこそ、わたしに捨てられないよう、健気に尽くしてくれたんだろう。