「……手紙なんて他の人間に託すか、魔法で飛ばせば良いでしょう? あなたの神殿には魔方陣を操ることの出来る人間も居ないんですか?」

「いますよ? いますけど、手紙は直接手渡ししてこそでしょう? 相手の反応を見たいが故に書いているようなものなのですから」

「いやいや、違いますって。直接会いに行けないから手紙を送るんです。第一、これはあなたじゃなくてマリアからの手紙で――――」

「それに、本当はマリア様はご自分で渡したがっていたのですよ? だけど、聖女就任の儀式が終わるまでの間、彼女は神殿を出ることが出来ません。あなたに神殿に来て欲しいと行った所で動きはしないでしょうし」

「当然です」


 なんでわたしが街に出ないといけないの、と唇を尖らせれば、彼はふふ、と小さく笑った。


「ですから、マリア様にあなたの反応を伝えるために、わざわざこうして出向いたんです。喜んでいただけたようで安心しました」

「はあ? これのどこが喜んでるって言うのよ」

「口元、さっきからずっとニヤけてますよ」


 神官はそう言って、わたしの口元を指でツンと弾く。思わぬことに、頬が一気に紅く染まった。