「心配? 一体何が……」

「先ほど、ジャンヌは参拝客の対応中に倒れてしまったのですよ。覚えていませんか?」

「あ……!」


 思い出した。
 そういえばわたし、マリアの本当の母親と話していて、いきなり息が苦しくなって、その場で倒れてしまったんだった。


「マリア様が聖女の力を使って助けてくださったのですよ? けれど、症状が治ってからも、ジャンヌは中々目を覚まさなくて」

「ああ……それで」


 こんなに心配しているのか。
 マリアの頭を撫でながら、わたしは小さく苦笑を漏らした。


「ジャンヌさん、大丈夫? 痛いところとか、苦しいところとかない?」

「ないよ、平気。めちゃくちゃピンピンしてる」


 聖女の力っていうのはすごい。倒れたことを忘れてしまうほどに、身体はバッチリ健康だ。
 だけど――――


「安心してください。マリア様はあの女と顔を合わせていません」


 セドリックが小声で耳打ちをする。わたしはほっと胸を撫で下ろした。


「あっ、そうだ! 喉乾いたでしょ? あたし、お水をもらってくるね! 待ってて!」


 一体何を思ったのか、マリアがパタパタと部屋を後にする。
 残ったのはわたしとセドリックのふたりきり。周りに人の気配がないか確認しつつ、わたしはセドリックに向き直った。