「ホント、あんたのお母さんはバカだねぇ。こんなに可愛い子を手放すなんて」


 可愛くて、柔らかくて、温かくて、いい香りがして、一緒にいると癒やされる天使みたいな子供。よしよし、って背中をポンポンしてやったら、マリアはまた「あんにゃ!」って言った。
 穏やかで暖かい幸せな気持ち。瞼がだんだん重くなっていく。


「――――さん!」


 遠ざかる意識の中、誰かの声が聞こえてきた。
 わたしを呼んでいるのかな? 眠くて、瞼が重くてたまらないのに、意識が寧ろ引き上げられていく。


「――――――さん!」


 さっきよりもハッキリと声が聞こえてきて、意識が唐突に覚醒した。


「ジャンヌさん!」


 心配そうなマリアの顔が飛び込んでくる。隣にはセドリックが居て、わたしの顔を覗き込んでいた。


「マリア……」

「良かった! あたし、心配で心配で……」


 瞳にたっぷりと涙を浮かべ、マリアがわたしに抱きついてくる。