「どの面下げてそんなことを! マリアの気持ちを考えてみてください! 自分を捨てた女が、自分とそっくりの女の子を連れて会いに来て、喜べると思いますか? 嬉しいと思いますか? わたしには無理です! 絶対、そんなふうには思えません! 
ふざけるなって……今まで一体、どこで何してたんだって! 消え失せろって思います! 
ですから、貴女と話すことなんて、なにもありません!」


 他の神官に話を聞いてもらっていた参拝客たちが一斉に、驚いた様子でわたしの方を向く。お祈りの邪魔をして申し訳ないって思うし、冷静にならなきゃって分かっているけど、ごめん。そんなの無理だ。


「待ってください! 私だって辛かったんです! あの頃は――――どうしても二人育てるだけの余裕がなかったんです! 私も、夫も、この子も、家族全員が死んでしまうぐらいならって……そう思いました。
けれど、今なら私は、聖女様を育てることができます!
あの子だってきっと、血の繋がった本当の母親と一緒に居たいと思う筈です!」

「けれど――――」


 言い返そうとしたその瞬間、ヒュッと喉が強く締まり、わたしはその場にうずくまった。


「ジャンヌ!?」


 苦しい。息が全然できない。

 異変を察知したセドリックが、わたしのもとに駆け寄ってきた。
 目の前が靄がかかったみたいに真っ暗になっていく。本当に何も見えない。


「マ、リア――――」


 薄れゆく意識の中、わたしは静かにマリアの名前を呼んだ。