「よろしくお願いいたします、神官様」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」


 笑顔を貼り付けながら、わたしは母娘を観察する。

 マリアの母親は、とても貧しそうな身なりをしていた。洗い古された枯れ草色の洋服に、あまり手入れのされていない髪や服。
 けれど、目鼻立ちだけはとても整っていて、輝かんばかりの美しさを誇っている。マリアがそのまま大人になった、という感じだ。


(だけど、この女はマリアを捨てた……)


 たとえどんな事情があったにせよ、その事実は変わらない。

 しかも、マリアとそっくりの双子の片割れは、しっかりと自分の手元に残しているんだもの。わたしからしたら心象最悪。本当にクソみたいな話だと思う。


「それで、本日はどのような願い事を?」

「それは――――この子がこの先も健やかに、幸せに成長してくれますように、と」


 その瞬間、鋭利な刃物で心臓を切り裂かれたかのような激痛が走り、わたしは思わず顔を歪めた。