「ジャンヌ?」


 わたしのただならぬ様子に気づいたのだろう。セドリックがわたしの視線の先を追い――――それから大きく息を呑んだ。


「本日は都合により、マリア様の参拝客受け入れはここまでとさせていただきます! マリア様の列にお並びの皆様につきましては、すぐに別の列に誘導させていただきますので、この場で今しばらくお待ち下さい!」


 セドリックの発表に「えーーっ」と大きなどよめきが湧き起こる。なんで? という疑問の声が、方々から聞こえてきた。


(関係のない人には申し訳ない。本当に、心から申し訳ない。だけど、今日だけは……! マリアのためにどうか許して)


 心のなかで必死に謝罪をしつつ、わたしは急いでマリアのもとに向かった。


「ジャンヌさん、どうしたの? さっきセドリックがもう終わりって言ってたけど、あたしまだやれるよ?」

「良いから。騎士たちと一緒に神殿の中に入って。急いで!」


 説明する時間が惜しくて、わたしは騎士たちにマリアを押し付ける。
 だけど、タイミングがあまりにも悪かった。


「え……?」


 一目聖女の姿を拝みたい――――おそらくはそう思ったのだろう。ぐっと背伸びをしたマリアの本当の母親が、大きく目を見開いている。


(しまった……!)


 おそらく彼女には、マリアの顔が見えてしまったに違いない。
 忌々しさに顔を歪めながら、わたしはマリアを神殿の中へと押し込んだ。