***


 朝食を終えたら気を取り直し、三人揃って参拝客の話を聞く。
 笑うことも、話を聞くことも、握手をすることすらも、今では抵抗がなくなってきた。

 もちろん、猫をかぶることは疲れるけれど、給料をもらって仕事をしている以上、わたしはプロだ。仕事の間ぐらいは、きちんとした自分を演じている。参拝客も喜んでくれるし、単調だった日々にメリハリができたし、案外性に合っているのかもしれない。


(このままずっと、こんな日々が続いていくのかな)


 マリアと、セドリックと一緒に笑い合いながら。
 そうだったら良いな――――そんなことを思ったそのときだった。


「ねえ、ママ! 新しい聖女様ってどんな子かなぁ?」


 参拝客の列の中から、舌足らずな幼い声が聞こえてきた。マリアの列の方角だ。


「さぁねぇ? ママにもまだよく見えないわ。だけど、新しい聖女様はあなたと同じぐらいの子供なんですって。お話するのがとっても楽しみねぇ。マリア様っていうお名前だそうよ」


 次いで、母親らしき女性の声が聞こえてくる。なんとなく、声の聞こえてきた方角に視線をやったその瞬間、わたしは驚愕に目を見開いた。