それからセドリックは嫌な顔ひとつせず、王都の中の色んな場所を、わたしに見せてくれた。

 国防を担う軍の訓練所に、警察的な役割を持った騎士の詰め所、孤児院や学校、スラム街、他にも至るところを。


「どうでしたか?」


 途中からデートらしさの欠片もなくなってしまったけれど、セドリックにとって、それは最初から織り込み済みだったのだろう。満足そうな表情で問い掛けてくる。


「楽しかったです。これから自分がなにをしたいのか、少しずつ見えてきた気がします」


 親代わりと呼ぶにはあまりにも頼りなく、情けないかもしれないけど、わたしにもマリアのためにできることがあるのなら、挑戦してみるだけの価値はあるのかもしれない。そう思うと、なんだか嬉しくなってきた。


「貴女の瞳にはいつも、私には見えないものが写っている――――そんな気がしていたのですが」


 セドリックはそう言って、わたしの頬をそっと撫でる。


「今日、こうして街を巡って、少しだけ同じものが見えた気がします。
家の中に溢れていた発明品がどうして生まれたのかも」

「え? ああ、あれ?」