「このお店なんかどうでしょう? ジャンヌの好みだと思いますよ」


 セドリックは街の様子に詳しく、色んなところを案内してくれた。

 アンティーク家具の店とか、手頃な値段の雑貨屋とか、アクセサリーや服、靴屋など。

 わたしが嫌がるだろうって分かっていたらしく、高級店は案内されなかった。全部、これまでの貯金や給料で買えるお値段だから、見ていてとても安心するし、地に足がついている感じがする。

 セドリック本人は『高給取りだ』って自分で豪語していたぐらいだし、そもそもが王弟という身分だ。こういった庶民的な店はあまり利用しないだろうに。


「貴女に楽しんでもらうために、ちゃんと予習したんですよ」

「ああもう! 言わんで良いんですよ、そういうことは!」


 お願いだから。ちゃんと自分で察するから! これ以上無駄にドキドキさせないでほしい。
 けれど、わたしの憎まれ口にもめげず、セドリックは嬉しそうに目を細めた。


「それだけ貴女のことを大切に思っているということです。黙っていても十分に伝わりませんから、きちんと言葉にしたほうが良いでしょう?」

「うぅ……」


 大切とか、そういう単語をあんまり出さないでほしい。恋愛関係は前世で懲りてるから、耐性を全部どこかに置いてきてしまっているんだもの。これまで意地を張りまくっていた分、どうしていいか分からないし。