「それじゃあセドリック、ジャンヌさんをよろしくね」

「はい! 必ずや、楽しい一日をお届けしますよ」


 セドリックがドンと胸を叩く。


(いやいや、なんでマリアがわたしのことをよろしく頼むのよ)


 これじゃあまるで、わたしの方が子供みたいだ。なんだか胸がこそばゆくなった。


「今日は仕方ないけど、次は絶対、マリアのことも連れて行ってね! あたし、お菓子屋さんとか、おもちゃ屋さんとか、行ってみたいところがいっぱいあるんだ!」

「もちろん。就任式が終わったら、三人でたくさん、色んなところに行きましょうね」


 二人はそう言って、わたしの目の前で指切りをした。
 マリアが嬉しそうに笑う。セドリックも優しく目を細める。
 そんな二人のやり取りは見ていてとても微笑ましい。まるで仲の良い父と娘みたいだ。


(――――いや、別に他意はないのよ?)


 わたしのせいで、マリアも隠遁生活を送っていたんだし、他人と――――特に異性との関わりが極端に少なかったんだもん。こうしてセドリックに甘えたくなるのも当然っていうか。そりゃ、お出かけのおねだりぐらいするし、嬉しそうにもするよね、という。


「それじゃあ、行きましょうか」

「うん」


 セドリックがわたしと手を繋ぐ。とても自然に。まるで、当たり前のことのように。
 たったそれだけのことだけど、わたしは本当にこの人と恋人同士になったんだなぁって実感した。