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 数日後、わたしとセドリックは二人そろって休暇を取った。


「良いなぁ、お出かけ! マリアも一緒に行きたかったなぁ!」


 出掛ける直前のこと。わたしたちの前で、珍しくマリアが駄々をこねている。

 聖女就任式まであと一ヶ月。それまでマリアは神殿を出ることができない。

 本当は日程をずらすべきか迷っていたんだけど、セドリックが『絶対に今が良い』って言うし。最初に出かけることを説明した時は、マリアも納得していたから大丈夫かなって思っていたんだけど、やっぱり寂しかったらしい。


「セドリック、やっぱり出掛けるのは一ヶ月後にしよう。マリアも一緒に行けるようになったら――――」

「それはダメ!」


 マリアが叫ぶ。わたしは思わず目を瞬いた。


「行かないのはダメ! マリアはお土産を買ってきてくれたらそれで良いの。そのかわり、いっぱい、いっぱい買ってきてね!」

「お土産? ……うん、分かった。マリアが好きそうなものを探してみる」

「うん! 楽しみにしてるね!」


 もっと粘られるかと思っていたけど、マリアは意外なほどアッサリと身を引いた。あまりにも聞き分けが良くて、かえって申し訳なくなってくる。